2014年11月13日

農地の空間分布パターンがニホンザル農作物加害群の行動圏選択に与える影響

 日本景観生態学会第24回金沢大会にてポスター賞をいただきました、新潟大学大学院の中村勇輝です。この度、このような賞を頂きましたことを心から嬉しく思いますとともに、この研究をより良いものにしていくための決意を新たにしております。今回の研究はニホンザル農作物加害群の行動圏面積と群れ頭数、環境の質、生息地の景観構造の関係性に着目した研究になります。

 近年、ニホンザルによる農作物被害が全国的に発生しており、深刻な問題となっています。各地域で対策がなされてきていますが、被害が慢性化する地域や新規化する地域が多い状況にあり、加害群の生態学的知見に基づいた効果的な被害管理が求められています。しかしながら、ニホンザル農作物加害群の生態学的な研究は自然群と比較して数が少なく、まだまだ不明な点が多いのが現状です。そこで今回は、基礎生態的な分野にあたる行動圏選択について着目し、研究を行いました。ニホンザルの行動圏選択については、これまでに数多くの研究がなされてきましたが、ニホンザル農作物加害群を対象とした研究はほとんどない状態となっています。このようなニホンザル農作物加害群の行動圏選択を明らかにしていくことは、被害管理を行っていく上で非常に重要な情報となります。

 本研究では新潟県新発田市に生息するニホンザル農作物加害群13群れを対象とし、行動圏面積と群れ頭数、行動圏内の環境情報から解析を行いました。位置情報に関しては2009年の位置情報を用い、生息地の環境情報は衛星データから作成した土地被覆図を用いました。これらのデータを用いて、固定カーネル法で行動圏推定を行い、行動圏面積や、群れ頭数、行動圏内に含まれる環境の質の関係について明らかにしていきました。さらに今回は、景観生態学的な視点から、生息地の景観構造がニホンザル農作物加害群の行動圏選択に与える影響についても評価していきました。

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図1.発表ポスター

 今回のポスター発表では、行動圏サイズと行動圏内の針葉樹林率の関係、行動圏内の農地面積と広葉樹面積の関係、農地の景観的特徴と行動圏内の広葉樹面積の関係の3つの解析結果を紹介いたしました。これらの結果、ニホンザル農作物加害群では、群れ間で一頭あたりの餌資源量に大きな差があることが分かり、自然群で成り立つ関係がみられないことが分かりました。さらに、農地の景観的特徴が農地の採食パッチとしての質(利用しやすさ)に影響することで、行動圏選択に影響していることが示唆されました。

 この研究は、まだまだ取り組み始めたばかりなので、今回の発表はまだまだ煮詰めなければならないところが多くあります。より幅広い視点から解析に取り組むことで、ニホンザル農作物加害群の行動圏選択を明らかにしていきたいと考えています。今後の課題としては、広葉樹の質の評価や作付物の分類、加害群度の把握、林縁からの距離による農地の重みづけなど… やらなければならない課題が山積みの状態となっています。今回頂いた賞を励みに全力で頑張ってまいります。

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図2.屋根の上でくつろぐ加害群ザル



中村勇輝 (なかむら ゆうき)
1991年生まれ。山口県岩国市出身。現在,新潟大学大学院自然科学研究科 博士前期課程1年在学中。
研究テーマはニホンザル農作物加害群の行動圏選択について。趣味・興味・関心のあることは、バードウォッチングと植物観察、ドライブ、旅行、運動(サッカー、バドミントン)など。野外で遊ぶのが大好物!!
posted by 管理者 at 16:42| Comment(0) | 景観生態学の現在