2011年08月18日

空間的階層概念に基づく湿生RDB植物の分布決定要因の抽出

 この度、景観生態学会千葉大会にてポスター賞を頂きまして、大変うれしく思います。このように名誉ある賞を頂けたのは、日々の研究指導をして下さっている鎌田先生はじめ、研究室の先生方や先輩方、友人の支えあってのことだと感じています。

 今回の発表は、全国スケール、流域スケール、地域スケールの3つのスケールから、湿生RDB植物の生育適地とその分布を決定付ける環境要因を明らかにしようと試みたものです。それぞれの解像度において抽出される環境要因は異なっており、広域スケール他、流域スケール、地域スケールで抽出された結果は階層的な地域計画づくりに反映することができます。このように解像度をあげることで、保全や修復の対象とすべき地域が明確になり、より効率的な計画を立てることができるからです。さらに実際に水辺環境の保全・修復のための施工を行うにあたっては、対象とする現場状況を詳細に把握する必要があります。なぜならば、時には数センチの水位差がある植物の分布を決定づけていることもあるからです。これは広域スケールから把握することは難しく、現場ベースの研究になります。このようにスケールを変化させてそれぞれのスケールにおける環境要因を抽出できれば、細かいスケールで抽出された環境要因を、一つ上のスケールで抽出されたそれと関連付けていくことで、大きな計画から実際の施工までを繋ぐような一つの論理を作ることができると考えています。

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 実際のところ、この研究は、湿地生の希少植物が数多く存在する徳島県鳴門市の段関地区とは、日本全体から見るとどのような環境に位置するのか、というところから始まりました。段関地区は地盤高が低い上に排水性が悪く、大きな出水などがあればすぐに一面冠水してしまうような地域です。その特性をうまく利用して、湿田でのレンコン栽培が盛んな地域でもあります。ここまでの解析で、段関とは窪地地形の中にあって、水がたまりやすく、流れにくい地域であることがわかってきました。

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 今、こうした結果を持って改めて現場を歩き、現地調査を行っているところです。段関の中でも希少植物の分布に偏りが見られることから、さらに細かい解像度で環境要因と希少植物の分布との関係を明らかにする必要があると考えたからです。この現地調査はかなりの労力と時間が必要です。調査方法は、対象地をくまなく歩き、対象としている稀少種がいたところで50地点といなかったところ50地点で、それぞれ1 程の調査区を設け、土壌水分、光量子、隣接する水田の水位といった物理環境要因のほか、フロラ調査や周囲の植物群の植生高および被度などを調べています。対象種が生育するためにはどのような環境が必要なのか、また年間通した変動が種子の生存や発芽にどのような影響があるのか、といった観点から、2週間に1回の割合で調査を行っています。

 最終的に局所的な環境要因と希少植物との関係性が明らかになれば、具体的な設計・施工の論議が行えると考えています。このように詳細な調査を、全ての地域で実施することは現実的には難しいですが、この結果を広いスケールに返すことで、日本全体、あるいは流域単位で見たときに、段関と類似した環境を持つ地域に適用することができるような論理を作っていくことが、今後の目標となります。



プロフィール
名前 大橋 順 (おおはし じゅん)
1988年生まれ。兵庫県神戸市出身。現在,徳島大学大学院先端技術科学教育部 知的力学システム工学専攻 建設創造システム工学コース 修士課程1年在学中。
研究テーマ 空間的階層概念に基づく湿生RDB植物の分布決定要因の抽出。
趣味・興味・関心のあること マーチング、ドラム、音楽鑑賞。

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2011年08月01日

ニホンザルの被害管理を目的とした樹種分類

 新潟大学大学院自然科学研究科の金谷です。この度は、景観生態学会千葉大会でポスター賞をいただけたことを光栄に思っています。学会関係者、審査員の皆様方に深く御礼申し上げます。また、このような栄誉ある賞を受賞できたのは村上拓彦先生をはじめ研究室の方々の日頃からのご指導ご鞭撻の賜物であり、深く感謝するとともに今後もより一層の精進を図りたい所存です。
 ポスター発表では、ニホンザル(Macaca fuscata)の被害管理を目的とした樹種分類をテーマとしました。現在、日本ではサルによる農作物被害の防除対策として、主に有害鳥獣駆除が行われています。しかし、被害が減少する地域もある一方で、農作物被食による個体数増加や、無計画な駆除による群れの分裂で被害が拡大する地域もあり、全国的に見て被害は横ばいの傾向にあります。そこで、近年では有害駆除のみに頼るのではなく、有害駆除を含めた総合的な対策を実施して、被害管理を行おうという試みが広まっています。その中でも、個体群を奥山へと押し上げることで、人とサルの棲み分けを図る追い上げが注目されています。しかし、追い上げを行う際は人里への再侵入を防ぐため、追い上げ先は餌資源が豊富にある好適な環境である必要があります。
 本研究では、高分解能衛星データを用いてサル生息域周辺山中から広域的かつ詳細にサルの餌資源を抽出することで生息適地を把握できないかと考え、サルの利用樹種として重要な堅果類(ブナ、ナラ類)のマッピングを行いました。分類結果はKappa係数で0.649となりましたが、堅果類以外の広葉樹と、一部の堅果類(未開葉)の誤分類が目立ちました。今後の課題としては、堅果類の抽出精度の向上を行うとともに、堅果類の分布域の中から更に追い上げに適した候補地の絞り込みと、地理空間情報を利用した候補地までの追い上げルート検出を行いたいと思っています。

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 調査地の新潟県新発田市では、サルの農作物被害に長年悩まされており、年間1000万近い被害が出ています。こうした深刻な被害が起こる地域では被害管理を諦めるケースが少なくない一方で、同市では有害鳥獣駆除のほかにラジオテレメトリーによる遊動域調査、モンキードッグの育成、野生動物の誘因要素となる放任果樹の除去などを行うことで、積極的に被害防除に取り組んでいます。何度か参加させていただいた講習会には、行政や農業組合の方以外に、一般の方々も多く参加しており、なぜ被害は起きるのか、どうやったら被害は減らせるのか、といったことを熱心に学んでいました。新発田市では今年か来年に試験的に追い上げが行われます。私が行う研究が、少しでもサルの被害軽減に貢献できればと思っています。

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プロフィール
金谷翔太(かなやしょうた)
1989年生まれ。新潟県新潟市出身。現在、新潟大学大学院自然科学研究科修士課程1年在学中。
修士課程での研究テーマは、ニホンザルの保護管理を目的とした地理空間情報の作成です。趣味・興味・関心のあることは読書、乗馬(馬術部所属)、美味い外国のビールの模索、今後の研究アプローチなどです。

posted by 管理者 at 10:53| Comment(0) | 景観生態学の現在