2011年07月12日

生態系のつなぎ方

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 わたしたちは、1000万種以上とも言われる生物の多様性とともに暮らしています。地球上の場所によって、とりまく生物の種や人との関わりは異なっています。都市にいると、そんなことに気付くことがなく、どこにいても同じものを食べ、同じ暮らしをすることができます。しかし、今のような均一化は100年に満たないことで、人類誕生後ほとんどの期間は自然に順応した暮らしをしてきました。
 一方で人は自然にはたらきかけて、独特の景観をつくりだしています。私の興味はそうした景観の中で物や生きものがどのように動くのか、あるいは逆にどのような物の動きが景観をつくりだすのかということです。
 日本の里山は、水田に必要な肥料や生活に必要な薪などを得るために、集落の周辺の耕作できない場所に林が残されたものです。徒歩の範囲で資源が循環しています。循環の仕組みは地域によって異なります。ラオスでは水田の中からたくさんの木が生えている景観に驚かされます(図1)。灌漑しない天水田では、雨季に稲を栽培し、乾期には牛を放牧します。牛や人のために木陰が必要なので、木を残すのです。落ち葉や糞が肥料になり、薪や材を得られます。木の葉や実や種は食べられます。里(水田)と山(林野)が一緒になっています。

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図1.水田の景観(ラオス)

 日本では、平らな土地はほとんど木を切り払って、人がひしめきあい、動物は山に住み分けています。これをあたりまえのように思っていますが、アフリカのサバンナではもともとの植生である草地で放牧によって生活しています。柵を張りめぐらさない限り、ライオンと共存しなければなりません(図2)。ナミビアでは、かつては野生動物を害獣として排除していました。2000kmにもおよぶ柵がつくられました。また、過放牧がチーターなどの生息を脅かします。ところが、近年では野生動物を積極的に利用しながら保全しようとしています。牧場や共有地で野生動物を保護し、観光に利用します。こうした取り組みを国土スケールの生態系ネットワークにつなげようとしています。

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図2.サバンナのライオン(アフリカ)



・プロフィール
夏原 由博(なつはら よしひろ)
1956年生まれ。名古屋大学大学院環境学研究科教授。里山や都市など人が利用する空間での生物多様性の保全を研究。主な著書に、「地球環境と保全生物学」(岩波書店、共著)、「いのちの森」(京都大学学術出版会、共著)。

posted by 管理者 at 11:27| Comment(0) | 景観生態学の現在