2011年01月11日

都市のはざまに残された里山  都市化による消失リスク vs 保全のためのソーシャル・キャピタル

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 皆様はじめまして,私は徳島大学大学院先端技術科学教育部博士課程の竹村紫苑と申します.この度,日本景観生態学会鳥取大会でポスター賞を頂き,大変光栄に思っております.私は琉球列島において観光資源として地域住民に利用されているマングローブ林を対象に,人為的な改変(都市化,河川改修,ダム建設など)が及ぼすマングローブ林への影響を,複数のスケールから評価するという研究に取り組んでいます.そうした中で,広域の視点からの解析によって自分が対象とするフィールドの相対的な位置づけが明確になる点に大きな興味を抱き,もっと広域でやってみたいという思いから今回の里山研究が始まりました.

 里山は人の生態系への関わりによって形成されてきた景観です.しかし,現在ではその関わり方が変化した結果,里山は都市開発による消失と管理放棄による荒廃という大きなリスクを負っています.これらのリスクに対して計画的・効率的な保全・再生を実施していく上で,都市化リスクの高い里山や,再生に関わるソーシャル・キャピタルの地図化が有効であると考えられます.この背景には都市の「はざま」に残された里山は都市化のリスクが高い一方で,都市圏に流れ込んだ住民によってそこに残された里山の希少性が価値化され,保全活動が促進されるという,動的でアンビバレントな関係性を仮定しています.私たちは上述の2つの仮説を以下の方法によって検証しました.

 里山は森林と農地と居住地がモザイク状に混在する景観であると定義されることから,国交省が提供する国土数値情報の土地被覆データ(1987年)を用いて1kmメッシュ内の森林と農地と宅地のモザイク度:H'を算出し,H'が0.6以上のエリアを里山地域として抽出します.次に,抽出された里山を都市のはざまに残る里山(はざま里山)と,それ以外の里山(都市圏外里山)に分類し,はざま里山と都市圏外里山において1987~2005年の間に市街地化率を比較しました.最後に,内閣府が提供するNPO法人情報データベースの中から活動目的に「生物・生態系・里山」を含む団体を抽出して地図化し,これらを再生に関わるソーシャル・キャピタルとして,はざま里山の変化パターン(1987〜2005年)ごとのNPO設立率を比較しました.

 その結果,はざま里山は都市圏外里山より市街地化率が高い一方で,はざま里山が市街地に置き換わった場所と,はざま里山が現在もはざま里山であり続けている場所でNPOの設立率は高かった.つまり,はざま里山は都市化による消失リスクは高いが,ボランティア等の人的資源を得やすい場所でもあり,保全・再生活動を行っていきやすい場所であると言えます.

 本研究の一番大きな成果は,実際に解析で抽出されたはざま里山に行ってみて,都市が目の前まで迫っている里山で地域住民の方々が熱心に活動を行なわれていることが複数の里山で感じられたことでした

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プロフィール
竹村 紫苑 (たけむら しおん)
1984年生まれ。兵庫県神戸市出身。
現在,徳島大学大学院先端技術科学教育部 建設創造システム工学コース 博士課程1年。
研究テーマは,観光資源としてのマングローブ林の生育地評価.趣味・興味・関心のあることは,エコシステムマネジメント・資源管理・スキー・トレッキング・キャンプ・美味しいご飯を食べること.


posted by 管理者 at 10:56| Comment(0) | 景観生態学の現在